議 長 挨 拶 本年度は、昨年よりも3工場少ない、47工場に対して品質管理監査を実施いたしました。監査委員が、各工場における経営者の品質管理する姿勢、工場設備の充実度、工程管理の適切さ、製品検査の記録に基づく品質保証の的確さ、実地試験による技術力等を確認した結果に基づき、品質監査会議委員がその内容を精査した上で、監査を受けた全工場が適切な体制の下、品質管理が行えていると認定しました。監査委員および品質監査会議委員の皆様にご協力をもちまして、公平で、厳正な監査が行えましたことに、あらためて感謝申し上げます。 受審工場が少なくなったため、県北では、高速道路を使って運搬したとしても90分以内にレディーミクストコンクリートが届かない地域が発生することになります。社会が円熟するにつれ公共事業への投資が縮小していくことは、他の先進国がたどってきた歴史からも自然なことなのかもしれません。しかし、その変化は急激なものであってはいけません。品質の確保されたレディーミクストコンクリートが県内のどの地域にも安定して供給されることを継続するためには、レディーミクストコンクリートの出荷体制が整うように計画的に生産が調整されることが重要と思います。 地球温暖化による環境の変化や、都市土木等の現場で求められる充塡性の確保は、これまでのJIS認証品だけで対応できるとは必ずしもいえません。これを受けて、昨年の9月に刊行された2023年制定土木学会コンクリート標準示方書[施工編]では、35℃を超える暑中コンクリートや締固めを要する高流動コンクリート等が追加されました。また、締固めを必要としない自己充填コンクリートも、[施工標準]に記載されました。今回の改訂では見送られましたが、補修や補強に用いられるコンクリートも近い将来、示方書に取り込まれるのは間違いありません。 岡野薫子さんの作品に「桃とう花か片へん」があります。陶工である楊が主人公の文学書です。楊の父親も陶工で、普段使う陶磁器に愛情を注いでいました。小さいころの楊は、父親が鑑賞に耐えるものをなぜ作らないのか不思議に思っていました。父の後を追って陶工になった楊の作品は高い値が付き人々から名人と呼ばれるほどになります。しかし、彼自身は、まだ子供の頃に父と一緒に作った陶磁器の美しさにかなうものを作れていない、と悩みます。ある日、世にもまれな名器である桃花片の水滴が見つかった、と噂が聞こえ、楊は持ち主に会いに行き水滴を見せてもらいます。その水滴を裏返すと、楊の父親の刻印があったという話です。 38℃を超える暑中コンクリートに用いられるコンクリートや自己充填コンクリート、または100N/mm2を超えるような高強度コンクリートは、日常的に出荷されるものではありません。これからのレディーミクストコンクリート工場には、楊のお父さんのように、普段は日常的に出荷されるJIS認証品に愛情を注ぎ、いざとなったときにはお客様にすごいと唸らせるコンクリートを出荷できる技術力が求められるように思います。 令和6年3月岡山県生コンクリート品質管理監査会議議長 綾 野 克 紀(岡山大学工学部都市環境創成コース教授)
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